向田邦子 『あ・うん』
急に読みたくなって向田邦子の小説『あ・うん』を再読している。
裏表紙にある内容説明。(文春文庫より)
つましい月給暮らしの水田仙吉と軍需景気で羽振りのいい中小企業の社長門倉修造との間の友情は、まるで神社の鳥居に並んだ一対の狛犬阿、呍のように親密なものであった。太平洋戦争をひかえた世相を背景に男の熱い友情と親友の妻への密かな思慕が織りなす市井の家族の情景を鮮やかに描いた著書唯一の長編小説。
私の『あ・うん』との最初の出会いは、実は書籍ではなく、中学生の時見たNHK「ドラマ人間模様」だ。"狛犬"である親友の2人は、杉浦直樹(門倉)とフランキー堺(仙吉)。そして、フランキー堺の妻役が(名前が分からなくて今調べた)吉村実子(たみ)だ。この夫婦と同居している父親役が志村喬。そして、娘役が岸本加世子だった。
今から25年も前のドラマなのに、とても印象に残っている。それだけ、素晴らしいドラマだったということだろう。というか、当時から私は早熟で、大人向けのドラマをじっくり見入ってしまい、あれこれ考えてしまうタイプだったのだ。
話を小説に戻そう。
若い時分に読んだ時よりも、現在の方が読んでいてぐっとくる場面が多い。特に、「やじろべえ」の中の言葉―
(3人=門倉・仙吉・たみの関係を見兼ねた門倉の妻君子が、自分が身を退けば丸く納まるのではと言いにやってきた時の仙吉と女2人の会話)
「あれ、なんていったかなあ、ほら、将棋の駒、ぐしゃぐしゃに積んどいて、そっと引っぱるやつ」(中略)
「一枚、こう引っぱると、ザザザザと崩れるんだなあ」(中略)
「おかしな形はおかしな形なりに均衡があって、それがみんなにとってしあわせな形ということも、あるんじゃないかなあ」
君子がたずねた。
「ひとつ脱けたら」
「みんな潰れるんじゃないですか」
この行は何故か、何回繰り返し読んでも泣きそうになる。
家族って案外、微妙なバランスで成り立っているんだよね、、、
よく、何でも話し合える親子だの、友達家族が理想だの言っている大人をテレビや雑誌で見かけるが、あんなのは嘘だろうと私は思っている。たとえ家族でも、何でもかんでも相手に伝えればいいというものではないだろうと考えているからだ。
この小説からは、本来日本人が持っている「奥ゆかしさ」というものを感じる。そして、何よりも登場人物が皆"粋"なのだ。
全編に漂っている空気は、やはりこの和歌だろう。
忍ぶれど色に出にけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで
(『百人一首』 40 平兼盛)
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Comments
去年見た向田邦子原作の映画、『阿修羅のごとく』良かったですよ。
大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子四姉妹の話です。
これもNHKで放送したドラマみたいですね。中村獅童、いい味出してます。
森田芳光監督が、珍しく正統派的な撮り方をしていて見やすかったです(笑)。時間のあるときにでもどうぞ。
Posted by: しんじ | April 08, 2005 at 02:34
ほう。よかったんですかー。<『阿修羅のごとく』
俳優陣にどうしても私の食指が動かなかった。(汗
大竹しのぶと黒木瞳はどうしても(以下省略)
そういえば、昔、森田芳光監督は夏目漱石の『それから』も撮ってましたね。
Posted by: fumi_o | April 08, 2005 at 09:07